基礎体温は、通常私たちが体温計で測定している体温とは異なるものです。
基礎体温とは、安静な状態で計った体温のことで、性周期に伴って一定のリズムで変化します。排卵日や生理日の予測に役立つため、基礎体温を継続して記録するのがおすすめです。
とはいえ、毎朝必ず同じコンディションで基礎体温を測定するのは難しいこともあるでしょう。
今回は、基礎体温が2層に分かれる仕組みや排卵日特定の方法、正しい基礎体温の測り方についてご紹介します。
- 二度寝してしまったけどどうしたらいいの?
- 測るのを忘れて起き上がってしまった場合は?
などのよくある質問にも回答していきます。ぜひ最後までご覧ください。
基礎体温が2層に分かれる仕組み

基礎体温が2層に分かれるのは「ホルモン」の影響によるものです。
排卵に関係するホルモンにはいくつか種類がありますが、重要な働きをするのが「プロゲステロン」と「エストロゲン」です。
月経開始から排卵までの期間の卵胞期と呼ばれるが約14日間あります。
この期間は、卵胞を成熟させるための期間で、体温が低い状態が続きます。

卵胞は卵子を包む袋のようなものです。エストロゲンが大量に分泌されると、脳からLHというホルモンが急激に分泌される(LHサージ)ことで、卵胞から卵子が飛び出ます。これを排卵と呼びます。
排卵が起こると、卵子を包んでいた卵胞は黄体へ変わります。
黄体から黄体ホルモンである「プロゲステロン」が分泌されることで体温が上昇し、高温期が約14日間続くのです。
低温期と比べ、高温期では体温が約0.5度上昇するとされています。
通常、高温期は14±1日持続し、9日以内の場合は黄体機能不全の可能性があるとされます。
(参考:J-STAGE「若年女性における長時間一定負荷運動時の体温調節反応:基礎体温の高低差及び性周期からの検討」p612)
プロゲステロンのおもな働きは以下の2つです。
- 体温を上げる
- 受精卵が着床しやすい環境を整える
妊娠が成立した場合には、高温期が維持されますが、成立しなかった場合には、子宮内膜が剥がれ落ちて生理がきます。
- 体温を上げて、高温期を維持する
- 受精卵が着床しやすいよう、子宮内膜を厚くする
排卵日の特定に基礎体温は欠かせない
排卵日を特定するには、以下のようにいくつかの方法がありますが、基礎体温を用いた予測が基本です。
- 基礎体温を用いた予測
- 排卵検査薬
- おりものシートを使った排卵日予測
- 産婦人科でのエコー検査
基礎体温がうまく測れず、基礎体温のみで排卵日予測が難しい方は、上記の方法の中から、自身の生活スタイルにあうものを選ぶようにしましょう。
正しい基礎体温の測り方
基礎体温の測り方3ステップ
口は開けっ放しではなく、軽く閉じた状態で。
普通の体温計ではなく「基礎体温計」を使用する
基礎体温計が普通の体温計と違うところは、小数点第二位まで測定できることです。
高温期と低温期の差は約0.5度です。小数点第一位までの通常の体温計では、高温期と低温期の差をしっかり把握するのは難しいため、専用の基礎体温計を用いるようにしましょう。
目覚めた後、起き上がらずに測れるよう、常に枕元に置いておくのがおすすめです。
毎朝記録して保管する
可能な限り毎朝測定し、記録しましょう。
記録はアプリや専用の用紙を用いる方法や、手帳に数値を書き込んでおく方法があります。
記録用紙または印刷可能なアプリを活用すると、産婦人科での受診時に提示しやすくなります。
基礎体温に影響を与える要因
基礎体温はさまざまな要因によって変化してしまいます。
ちょっとした変化であっても、基礎体温を記録しているアプリや用紙にメモを残しておくようにしましょう。
- 就寝時間
- 体調不良
- 部屋の温度
- 夜間のトイレ
- 鼻づまりなどで、睡眠時に口を開けている
- 布団の有無
注意が必要な基礎体温のパターン
低温期が続いていて、高温期に入らない
月経のような出血があっても、高温期がない場合には排卵が行われていない「無排卵月経」の場合があります。
基礎体温表を持参し、産婦人科の受診を受けるようにしましょう。
高温期が短い
高温期が短く、9日以内の場合は黄体機能不全の可能性が考えられます。
(参考:J-STAGE「若年女性における長時間一定負荷運動時の体温調節反応:基礎体温の高低差及び性周期からの検討」p612)
基礎体温表を持参し、産婦人科を受診しましょう。
妊娠時の基礎体温の変化
妊娠時は、高温期の状態がずっと維持されます。
妊娠成立により、プロゲステロンが分泌され続けるためです。
高温期の状態が一定期間続いたあと、徐々に体温が低下していく下降期に入るとされています。
下降期に入るタイミングはおおよそ妊娠4~5か月目で、32週以降の妊娠末期に最低温に近づくことが多いと報告されています。
(参考:J-STAGE「妊娠と基礎体温(1)-妊娠成立から分娩終了までの正常基礎体温の観察-」p149)
よくある質問
測定前に起き上がってしまったときは?
起き上がったり動いてしまったりした場合、体温が上昇してしまいます。
アプリや記録用紙の備考欄に起き上がってしまったことを記録しておき、グラフ全体の傾向を見るようにしましょう。
二度寝してしまったときは?
二度寝してしまった場合も、起き上がったり動いたりしてしまうことで体温が上昇する場合があります。
アプリや記録用紙の備考欄に二度寝したことを記録しておき、グラフ全体の傾向を見るようにしましょう。
基礎体温が下がっても生理がこない
生理が来ない場合には、妊娠の可能性だけでなくストレスやほかの疾患などさまざまなケースが考えられます。
産婦人科を受診するようにしましょう。
基礎体温がガタガタでも妊娠できる?
基礎体温がガタガタでも妊娠したとする報告は多くあります。
睡眠時間が短くても大丈夫?
なるべく6時間以上の睡眠をとったあとの測定がのぞましいとされています。
(参考:J-STAGE「妊娠と基礎体温(1)-妊娠成立から分娩終了までの正常基礎体温の観察-」p149)
基礎体温の仕組みを理解して、排卵予測に活用しましょう
基礎体温の仕組みを理解すると、女性の体の中でどのような変化が起きているかがわかりやすくなります。
排卵日の予測だけでなく、生理前の不調などもつかみやすくなるため、基礎体温の記録を習慣化するのがおすすめです。
基礎体温は体調や環境によって変化しやすいため、一日一日の変化ではなく、生理周期全体で見た際の変化を捉えるようにしましょう。