近年の少年サッカーでは、5人制や6人制などの「スモールサイドゲーム(SSG)」が注目されています。
背景にあるのは、日本サッカー協会(JFA)が進める「子ども中心」の育成環境です。
低学年では、「8人制だと広すぎる」「ボールに触れない子がいる」といった課題もあり、近年は発達段階に合わせた少人数制を導入する地域も増えています。
この記事では、JFAがスモールサイドゲームを推奨する理由やメリット、低学年8人制の問題点について解説します。
日本サッカーでスモールサイドゲームが注目される背景

近年の少年サッカーでは、「スモールサイドゲーム(SSG)」という考え方が広がっています。
特に低学年カテゴリーでは、5人制や6人制など少人数で試合を行う大会も増えてきました。
背景にあるのは、日本サッカー協会(JFA)が長年進めてきた育成改革です。
ここでは、日本サッカーでスモールサイドゲームが注目されるようになった流れを解説します。
2003年のキッズプロジェクトから始まった育成改革
日本サッカーでは、2000年代前半から低年齢層の育成環境見直しが進められてきました。
そのきっかけのひとつが、2003年頃から本格化したJFAの「キッズプロジェクト」です。
当時は、子どもたちが大人に近い環境でプレーするケースも多く、
- コートが広すぎる
- 人数が多すぎる
- ボールに触れない子がいる
といった課題がありました。
そこでJFAは、「子どもの発達段階に合った環境づくり」を重視するようになります。
特に低学年では、
- たくさんボールに触る
- 自分で判断する
- サッカーを楽しむ
ことが重要だと考えられるようになりました。
この流れが、後のスモールサイドゲーム普及につながっていきます。
2011年にU-12で8人制が全面導入された
育成改革の中で大きな転換点となったのが、2011年のU-12年代における8人制の全面導入です。
それまで主流だった11人制から8人制へ変わったことで、
- ボールタッチ数の増加
- プレー関与回数の増加
- 個人技を発揮する機会の増加
など、多くの育成効果が期待されました。
当初は「人数が少ないとサッカーにならない」という意見もありましたが、現在では8人制は全国的に定着しています。
実際に、11人制時代と比べて、
- 子どもがプレーへ関わる回数が増えた
- 攻守の切り替えを経験しやすくなった
- 個人の判断力が育ちやすくなった
と感じる指導者も多く、8人制は日本の少年サッカー育成を大きく変えた制度のひとつと言えるでしょう。
低学年にも8人制を適用する現状への疑問
一方で近年は、「低学年にも8人制をそのまま適用してよいのか」という課題も指摘されています。
U-12年代では成果を上げた8人制ですが、小学校1〜2年生にとっては、まだコートが広すぎるケースもあります。
実際の試合では、
- ゴールまで遠くシュートが届かない
- ボール周辺に全員が集まる
- プレーに関われない子が出る
といった光景も少なくありません。
低学年は、まだ身体能力や認知能力が発達途中の年代です。
そのため、人数やコートサイズが合っていないと、「試合に出ているだけ」になってしまう場合があります。
こうした背景から現在は、3対3や4対4、5対5など、さらに少人数で行うスモールサイドゲームに注目が集まっています。
子どもの成長段階に合わせてゲーム環境を調整しようという考え方が、近年の育成現場で広がっているのです。
低学年8人制で起きやすい問題点

8人制は日本の少年サッカー育成を大きく変えた制度ですが、低学年では課題も指摘されています。
特に小学校1〜2年生では、身体能力や認知能力の発達段階によって、「ゲームサイズが大きすぎる」状態になりやすいと考えられています。
ゴールが遠くシュート機会が少なくなる
低学年の子どもにとって、8人制コートは想像以上に広い環境です。
そのため、
- ゴールまでボールを運べない
- シュートまで行けない
- 遠くから蹴るだけになる
といった場面が増えやすくなります。
特に低学年では、「シュートを打てた」「点を決められた」という成功体験は非常に重要です。
しかし、コートが広すぎるとゴールが遠くなり、攻撃の楽しさを感じにくくなる場合があります。
人が密集しボールを扱うスペースがなくなる
低学年では、まだポジション感覚やスペース認知が十分に育っていません。
そのため8人制では、ボール周辺に全員が集まる「団子状態」になりやすくなります。
人数が多いことで、
- ドリブルするスペースがない
- 周囲を見る余裕がない
- ボールを持ってもすぐ囲まれる
という状況が増え、技術を発揮しにくくなるケースもあります。
特に低学年では、「広いスペースを使う」よりも、「まずは自由にボールを扱う経験」を積むことが重要と考えられています。
試合に関われず「立っている時間」が生まれやすい
低学年の8人制では、プレーへ関われない時間が長くなる子もいます。
特に、
- ボールから遠い位置にいる
- 展開についていけない
- 守備と攻撃の切り替えが難しい
場合には、試合中ほとんどボールに触れず終わるケースもあります。
大人から見ると「試合に出ている」状態でも、子ども自身は「見ているだけ」に近い感覚になってしまうことも少なくありません。
これでは、技術向上だけでなく、「サッカーが楽しい」という感覚も得にくくなります。
発達段階とゲームサイズが合っていないケースもある
低学年は、まだ身体能力・判断力・認知能力が発達途中の年代です。
そのため、大人や高学年と同じ感覚でゲームを設計すると、子どもにとって難しすぎる環境になる場合があります。
近年は世界的にも、
- 年齢に合わせた人数
- 発達段階に合ったコートサイズ
- 適切なプレー環境
を整える考え方が重視されています。
その流れの中で、低学年には8人制よりさらに少人数の形式が適しているのではないか、という考え方が広がっています。
JFAがスモールサイドゲームを推奨する理由

こうした低学年8人制の課題を踏まえ、日本サッカー協会(JFA)ではスモールサイドゲーム(SSG)の考え方を重視しています。
人数やコートサイズを小さくする目的は、単に簡略化するためではありません。
子どもがより多くプレーへ関わり、成長しやすい環境を作ることが目的です。
ボールに触る回数が増えるため
スモールサイドゲーム最大の特徴は、1人あたりのボールタッチ数が増えることです。
人数が少なくなることで、
- パスを受ける
- ドリブルする
- シュートを打つ
- 守備をする
など、プレー機会そのものが増えます。
低学年では、長時間説明を聞くよりも、「たくさんプレーすること」が成長につながりやすいと考えられています。
判断する機会が増えるため
少人数になると、プレーへ関わる頻度が自然と増えます。
そのため子どもたちは、
- どこへ動くか
- いつパスを出すか
- どこを守るか
を自分で考える場面が多くなります。
近年の育成では、「指示通り動く選手」ではなく、「自分で判断できる選手」を育てる重要性が高まっています。
SSGは、その判断経験を増やしやすい環境と言えるでしょう。
攻守両方を経験しやすくなるため
低学年では、特定ポジションに固定しすぎないことも重要です。
スモールサイドゲームでは人数が少ないため、
- 攻撃
- 守備
- 切り替え
すべてを全員が経験しやすくなります。
攻撃だけ、守備だけになりにくく、サッカー全体を理解するきっかけにもつながります。
「Players First(子ども中心)」の考え方を重視しているため
JFAがSSGを重視する背景には、「Players First(子ども中心)」という考え方があります。
これは、「大人がやりやすい環境」ではなく、「子どもが成長しやすい環境」を優先する考え方です。
たとえば、
- 大人から見ると狭いコートでも、子どもには適切なサイズかもしれない
- 少人数の方が、子どもは多く成功体験を得られるかもしれない
という視点で環境を考えます。
スモールサイドゲームは、単なる人数変更ではありません。
子どもたちが主体的にプレーし、サッカーを楽しみながら成長するための育成環境として、近年さらに注目されているのです。
年代別に考える理想的なゲーム形式

スモールサイドゲームでは、「年齢に応じて適切な人数やコートサイズを選ぶ」ことが重視されています。
具体的には以下のようにJFAによってガイドラインが作成されています。
| 未就学児 | 小1~2 | 小3~4 | |
| 人数 | 3対3 GKなし | 4対4 GKなし | 5対5 GKあり |
| ピッチサイズ(m) | 20×10 | 25×15 | 35×25 |
| ゴールサイズ(m) | 2×1 | 3×2 | |
| ペナルティエリア | なし | 縦6×横15m | |
| ボール | 3号球 | 4号球 | |
| ゲーム時間 | 5分×2 | 7分×2 | |
| 1日の最大出場時間 | 30分 | 40分 | 60分 |
| リスタート | ドリブルイン・キックイン | ドリブルイン・キックイン(徐々にスローインを導入) | |
| 得点後 | ゴールラインから | ||
| ゴールキック | ゴールラインからキックインまたはドリブルイン 相手は3m以上離れる | ||
| オフサイド | 適用しない | ||
子どもの発達段階によって、適したゲーム環境は変わるためです。
幼児年代は3対3が適している理由
幼児年代では、まず「自分とボール」の関係を作ることが重要です。
人数が多すぎると、
- ボールに触れない
- 周囲を理解できない
- 試合についていけない
状態になりやすいため、3対3程度の少人数が適しているとされています。
少人数にすることで、ボールを触る・ドリブルする・ゴールを狙う回数が増え、サッカーの楽しさを感じやすくなります。
小学校1〜2年生は4対4でプレー機会を増やす
小学校低学年では、少しずつ「仲間と協力する」感覚が育ってきます。
4対4では、
- パスを出す
- サポートする
- 攻守を切り替える
など、サッカーの基本的な関わりを自然に経験しやすくなります。
また、人数が少ないことで、試合中にプレーへ関わる回数も増えます。
低学年では、「待つ時間」より「動く時間」を増やすことが重要です。
小学校3〜4年生は5対5で協力や戦術を学ぶ
3〜4年生になると、周囲を見る力や判断力も少しずつ発達してきます。
5対5では、
- スペースを使う
- 味方との距離を考える
- 守備バランスを意識する
など、よりサッカーらしい要素を学びやすくなります。
ただし、この年代でもまだ「全員がプレーへ関わること」は重要です。
大人のサッカーに近づけることよりも、プレー経験を積ませることが優先されます。
高学年では8人制へつなげていく考え方
高学年になると、身体能力や認知能力も発達し、8人制への移行が進んでいきます。
人数が増えることで、
- ポジション理解
- 幅と深さ
- チーム全体のバランス
なども学びやすくなります。
ただし、近年は高学年でも、少人数トレーニングやSSG形式のゲームを積極的に取り入れるチームも増えています。
8人制へ移行した後も、「子どもが多くプレーへ関わる環境」が重視されているためです。
まとめ

スモールサイドゲーム(SSG)は、子どもの発達段階に合わせて人数やコートサイズを調整する育成方法です。
日本サッカー協会(JFA)でも、低学年育成において重要な考え方として推奨されています。
特に低学年では、
- ボールに触る回数を増やす
- 自分で判断する機会を作る
- 全員が試合へ関わる
ことが重要とされています。
そのため近年は、従来の8人制だけでなく、さらに少人数のゲーム形式を導入する地域も増えてきました。
スモールサイドゲームは、単なる「小さいサッカー」ではありません。
子どもたちが主体的にプレーし、サッカーを楽しみながら成長するための環境づくりとして、これからさらに注目されていく考え方と言えるでしょう。

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