胎児の脈絡叢嚢胞はいつ消える?:20週エコーで指摘された際の実例紹介

妊娠と産み分け



産院においては、妊娠6ヶ月頃に胎児スクリーニングが行われることがあり、この検査によって脈絡叢嚢胞が診断されることがあります。
胎児スクリーニングにはさまざまな種類がありますが、ここで言及しているのはエコーを使用した胎児スクリーニングです。

胎児スクリーニングは通常、妊娠中期に実施され、医師は超音波画像を通じて胎児の成長や臓器の発達、異常の有無を確認します。

脈絡叢嚢胞については、成長に伴い自然に消失することもあるため、妊娠期間中は経過観察となることが一般的です。

脈絡叢嚢胞については一般的にはあまり知られていないため、これに関する文献情報も簡単に紹介いたします。

1.脈絡叢嚢胞(みゃくらくそうのうほう)とは:脳室内の嚢胞のこと

脈絡叢嚢胞:「みゃくらくそうのうほう」と読みます

その名の通り、脈絡叢にできる嚢胞のことです。
脳室の中には髄液というものが入っていますが、この髄液を作っているのが脈絡叢です。
嚢胞とは液体で満たされた小さな袋状の構造を指します。

脈絡叢は脳の発達に不可欠な組織ですね

脈絡叢嚢胞について、日本産婦人科医会のホームページでは以下のように記載されています

脈絡叢嚢胞 (CPC; choroid plexus cyst)

妊娠20週ごろの中期の胎児スクリーニングでみつかることが多い。脳室内にある高エコー像を呈する脈絡叢に低エコーの嚢胞(cyst)ができる。両側に見られることもあることや、大きい場合もあるが、ほとんどは週数とともに消失します

(引用:日本産婦人科医会HP)

ほとんどは週数とともに消失すると書かれていますね

2.脈絡叢嚢胞はなぜできるのか? 何が問題なのか?


なぜこのような嚢胞ができるのかは不明とされています。

消失することが多いとされる脈絡叢嚢胞をエコーで重視するのはなぜなのでしょうか。
脈絡叢嚢胞は以前までは稀な疾患と考えられていましたが、近年では胎児の1%程にみられる疾患であることがわかっています。
様々な調査により、この脈絡叢嚢胞と染色体異常が合併する確率が高いということがわかり、重視されるようになりました。
従って、胎児をしっかりエコーで観察することのできる胎児スクリーニング等のタイミングで脈絡叢嚢胞の有無を確認することが多いようです。

3.脈絡叢嚢胞と染色体異常との関係:ダウン症候群・エドワーズ症候群との関係


脈絡叢嚢胞は特に18トリソミー・21トリソミーとの関係性が強いと言われています。
脈絡叢嚢胞が原因というわけではなく、エコー所見において脈絡叢嚢胞と併せて他の異常が見られた際に、18トリソミーの可能性が高くなるとされています。

脈絡叢嚢胞の約7.2%に18トリソミーあるいは21トリソミーなどの染色体異常症例が合併するといった報告があります。(Pergignanoetal.,1992)

18トリソミー=18番目の染色体が1本多くなっている染色体異常。エドワーズ症候群
21トリソミー=21番目の染色体が1本多くなっている染色体異常。ダウン症候群

また1997年の西らの文献により以下のことが報告されています

Benacerrafら(1990,1994)は,トリソミーを検出するのに必要な異常超音波所見として,thickenednuchalfold,奇形,短い大腿骨,短い上腕骨,腎孟の拡大,腸管の高エコー像,脈絡叢嚢胞の有無等の因子をあげ,その重複存在の度合いがトリソミーである可能性を高め,逆に脈絡叢嚢胞単独発症例ではトリソミーの検出率は低くなることを報告している.

脈絡叢嚢胞単独発症例における18トリソミーの1ikelyhood ratioが0.03であるのに対し,合併奇形が1つ認められると0.4,2つ以上認められると20.5とその値が急増すること(Snijderseta1.,1996)も知られている

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sanpunosinpo1949/49/4/49_4_372/_pdf/-char/ja

つまり、脈絡叢嚢胞が見られるだけではトリソミーのリスクは大きく上がらず、他の所見が重なってくることでリスクがあがるということのようです。

脈絡叢嚢胞の他に異常所見があるかどうかが重要です

4.脈絡叢嚢胞はいつ頃消えるのか:実体験の記録

いつ頃自然消失するのか


胎児スクリーニングで報告される脈絡叢嚢胞はほとんどの場合自然消滅すると言われています。

先ほどご紹介した文献内でも症例15例全例において妊娠15~26週の間に自然消失したと報告されています。

実体験:妊娠20週で脈絡叢嚢胞を指摘

私自身も妊娠20週で胎児スクリーニングを実施し、その際に脈絡叢嚢胞を指摘されました。
1か月後24週の検診では脈絡叢嚢胞の縮小が確認され、さらに2週間後の26週の検診時には消失が確認されています。
その後も検診の度に確認して頂きましたが、嚢胞は確認できなくなっていたため消失したと考えるとの判断でした。

無事出産し、1歳の検診まで発達等問題なく成長してくれています。

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