妊婦さんが梅毒感染した場合、新生児・胎児への影響は?

妊娠と産み分け

妊婦さんが感染した場合、胎児にも影響するのか

性感染症による母子感染を調べた調査結果では、経口ペニシリン製剤を用いて治療しても14%で母子感染がおこると言われています。
(日本産婦人科学会が2012~2016年に実施した実態調査の結果より)

国内では梅毒患者が増加傾向にあり、2022年には患者数が10,000人を超えたと報告されています。
女性感染者の75%ほどが若年層(20~30代)であるとされており、それに伴い先天梅毒患者も増加傾向にあります。

先天梅毒とは、妊婦さんが梅毒に感染していた場合胎盤を通じて胎児に伝播する母子感染症を指します

妊婦さんが梅毒に感染した時の治療法は?

日本における梅毒の第一選択薬はベンジルペニシリンベンザチンとアモキシシリンです。
マクロライド系の抗菌薬も一定の効果があるとされていますが、耐性菌の問題から第一選択薬とはなりません。

WHO(世界保健機関)およびCDC(米国疾病予防管理センター)ではベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤が推奨薬として記載されています。
この薬剤は先天梅毒症例の98.2%を予防したと報告されています。
(早期梅毒の97.1% 潜伏期間不明の梅毒を含む後期梅毒を100%予防)
経口のペニシリン製剤しか使えなかった日本でも、2021年に筋注製剤も承認が下りたことで筋注製剤が使用可能となりました。

妊婦さんに注意!Jarisch-Herxheimer反応とは


Jarisch-Herxheimer反応とはペニシリン投与による治療開始から24時間以内に頭痛・筋肉痛・発熱等の症状を呈するとのです。女性に起こりやすいとされています。

ペニシリンが効いて、体内で大量に菌が死んでしまうことで起こる症状のようです

一般的には自然軽快するとされていますが、妊婦さんが発症した場合には胎児機能不全や早産の危険性があるため入院によって治療開始することが望ましいとされています。

妊婦における初期スクリーニングの重要性

梅毒合併妊婦のうち4人に1人は妊婦検診が未受診または不定期受診であったとされています。
妊婦さんは通常12週ごろに初期スクリーニングを受けます。
妊婦検診が未受診であったり定期受診ができていない妊婦さんの場合、初期スクリーニング検査が抜けてしまい、梅毒の発見が遅れてしまうリスクがあります。

10~20代が70%を占める
垂直感染は後期梅毒でも起こる

先天梅毒 胎児や出生児の症状は?

先天梅毒の胎児における症状


胎児発育不全
肝脾腫
心奇形
紫斑
小頭症
水頭症
脳内石灰化

先天梅毒の出生児における症状

難聴
失明
精神発達遅延
白内障
骨軟骨炎
斑状発疹
水泡状発疹
角膜炎

治療をしないとどうなるのか


無治療の場合には40%で死産または新生児期に死亡する可能性があるとされています。

日本における筋注のペニシリン製剤の発売

2021年1月に、日本においても筋注のペニシリン製剤(ファイザー社、ステルイズ)が承認されました。

この製品についてファイザー社は以下のように説明しています

ステルイズは早期梅毒に対して単回投与で治療効果が期待できること、アドヒアランスの低下による治療失敗は考え難いこと、これまで海外では梅毒患者の治療に貢献してきた実績がある

https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2022/2022-01-26

本剤は、神経梅毒を除く活動性梅毒の治療薬として、従来の第一選択薬と同等の位置づけになると期待されます

https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2022/2022-01-26

一般的に経口薬から注射薬に変わるメリットとしてアドヒアランスの改善があります。
飲み忘れや食べ物との関係で、十分な効果が得られないことがありますが、注射剤にすることでそのような影響を少なくすることができます。

確実に投与できるのは注射剤の大きなメリットですね

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